先日、3歳児の子どもたちと「アートのじかん」を楽しみました。この日の活動では、土粘土とさまざまな道具を使い、素材との出会いを経験しました。
初めての活動に、子どもたちの反応は実にさまざまでした。目を輝かせて身を乗り出す子、不安そうに保育者の手をぎゅっと握りながら話を聞く子、少し距離を取りながらも耳だけはこちらに向けている子…。そのどれもが、子どもたちの「今」の姿であり、そうした多様な在り方が受け入れられている、この安心できる空間から活動は始まりました。

「アートのじかん」は、作品をつくることだけが目的ではありません。素材と出会い、自分の「感じたこと」や「思ったこと」と向き合いながら、自由に表現していく。そうしたプロセスそのものを大切にしたいと考えています。
だからこそ大切にしているのは、「安心・安全に表現できること」「やってみたい!が叶うこと」「こうでなければ、という枠から解き放たれること」そして「自分の思いや感覚が尊重されること」。日々の保育の中でも大切にしているこれらの視点を、アートのじかんではより自由に、のびやかに広げていきたいと思っています。

土粘土を目の前にした子どもたちは、柔らかいもの、硬いものを実際に触れて選び、試し始めました。スプーンやフォーク、バターナイフ、紙やすり、麺棒などの道具にも興味津々。「これにしよう!」と即決する子もいれば、じっくりと時間をかけて選ぶ子もいて、それぞれの個性がよく表れていました。
最初緊張していた子や、少し距離をとっていた子も、次第に手を伸ばして遊び始めていました。きっと「ここは安心できる場所」と感じられたのでしょう。
麺棒で粘土を何度も伸ばし、ぺらぺらにすることに夢中になった子もいました。その作品を「触ってもいい?」とたずねると、自慢げにうなずきながら差し出してくれる姿に、作品への誇りがにじみ出ていてとても印象的でした。

また、大きな塊を糸で切ることに挑戦した子もいました。体全体を使ってやっとの思いで切ると、満足そうな笑顔を見せてくれました。さらに驚いたのは、切った粘土に麺棒をのせ、足で踏んでぺちゃんこにするという遊びへと自ら発展させていったのです。体の重さを使って素材と向き合うその姿には、「やってみたい!」のエネルギーがあふれていました。


子どもたちはそれぞれの方法で素材と向き合い、自分の感覚を信じて表現していました。正解を求められることなく、「こうでなきゃいけない」から解放された空間だからこそ、自分らしくいられる時間になったのだと思います。
これからも、そんな自由な表現と豊かな出会いを大切にしていきたいと思います。
